船の方に向かってくる人影を見て、スカーレルが声を掛けた。
「あら、センセ。お帰りなさい。お買い物は済んだ?」
「うん、必要な物は皆買ってきたよ」
「おう、助かったぜ。で、ソノラは何でむくれてるんだ?」
レックスの背後をとぼとぼと歩く妹の顔を見て、カイルが尋ねた。
「それが・・・」
「絶対! ぜーったい、銃を手に入れてやるんだからー!!!」
ソノラは絶叫すると、集落の方へと駆け出した。
「つまり、銃を売ってもらうには、護人の許可がいるわけですね」
「そりゃあ災難だな。集落の奴ら」
「大丈夫かなあ、ソノラ。まだ島の人達とは知り合ったばかりだし・・・」
レックスは心配そうにソノラの走り去ったあとを見詰めていた。
「まあ、ソノラさん次第ですから」
「うまくいかなかったら、相談に乗ってあげましょ」
〜ラトリクス〜
どたどたと勢い良く駆け込んできたソノラは、満面の笑顔で切り出した。
「こんにちはー! 銃使わせてー!」
「・・・また、唐突ね」
アルディラは呆れた表情で振り返った。
「あたしは、銃で戦いたいの! だから、許可出して!」
「駄目よ」
きっぱりとアルディラは答える。
「でもさ、ここにも銃ってあるでしょ? 使わないと錆びちゃうよ。あたし手入れの仕方にも自信あるんだ」
「間に合ってるわ」
「何でもするから! 何か、あたしにして欲しいことってない?」
「帰ってちょうだい」
スッと音もなく現れたクノンが、ソノラを部屋の外へ押し出す。
「気をつけてお帰り下さい」
「ちょっとー! まだ話がー・・・」
遠ざかってゆく叫びを聞きながら、アルディラは小さく息をついた。
〜風雷の郷〜
「ですから、銃の使用は許可できません」
「どうしてー?」
キュウマの頑なな口調にソノラは膨れ面で聞き返す。
「あなた方は島に来てまだ日が浅い。今の段階では、そこまでの信頼を寄せて良いものかどうか、判断がつきかねます。それに、銃を持ち出すほどの危機も生じておりません」
「ぶーぶー! ケチー! 石頭ー!」
「何とでも仰って下さい。とにかく、許可はできません」
背を向けたキュウマの首の布をノノラは掴んだ。
「ふっふーんだ。 認めてくれるまで離してあげないからねー!」
ゴトッ。
重い音がして、布が地に落ちた。
太い木の枝に布が巻きつけられ、ひらひら風に靡いている。
「鬼ー!!!」
「ここ、鬼の郷だよ!」
無邪気に答えるスバルであった。
〜狭間の領域〜
「だからねー、ファルゼン」
「フゥゥン」
「銃使わせてくれないかなあ?」
「フォォォォ!」
「あたしだって、銃さえあれば大活躍! 島の安全はバッチリ!」
「フォォ・・・」
「ねっ! だから、許可くれない?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
銀色の光を放つ無表情な鎧をソノラはしばし見詰めた後、おもむろに中を覗き込んだ。
「ファルゼン、起きてるー?」
パタパタと軽い音がして、天使がファルゼンの隣に降り立った。
フレイズは二人の間に割り込む。
「はいはい、ファルゼン様は休息の時間です。これ以上の会話はご遠慮下さい」
銀色の鎧は音も立てず水晶の間に消えていった。
「ぶーぶー・・・」
文句を言ったところで、答える者もいない。
「ぶーぶー・・・」
と、思ったら、横から同じセリフが聞こえてきた。
振り返ったソノラの目に、びっくりした顔の自分が映る。
「何ー? こんな時に真似しないでよ!」
「何ー? こんな時に真似しないでよ!」
頬を膨らませて言うと、同じ表情で同じ言葉が繰り返される。
「あたし今機嫌悪いんだからね!」
「あたし今機嫌悪いんだからね!」
不満げに、しかしどことなく楽しそうに真似る師匠。
「もー! 腹立つー!! じゃあ、こんな動きはどう!? 真似できる!?」
その場でめちゃくちゃな踊りを始めるソノラ。
師匠は楽しげに物真似を続けるのだった。
数十分後。
「師匠ー! 勝負だー!」
双子水晶に乗り込んできたレックスが見たものは、地面の上で伸びている二人のソノラだった。 レックスは少し考えた後、口を開いた。
「で、どっちが勝ったの?」
「先生のバカー!」
「先生のバカー!」
〜ユクレス村〜
「シマシマさんですかー? マルルゥもさっきから探してるのですよー」
「うーん・・・」
村をぐるりと見回したソノラは、ユクレスの気に目を留めた。
「そうだ! 高い所ならよくわかるよ!」
木の上から村全体を見下ろすと、意外と近くに枝の上で居眠りをしている銃人の姿が見えた。
ソノラは素早く木から下りると、ヤッファのいる木の下に駆け寄った。
「ヤッファー!」
「ぐごー」
「銃使っていいー!?」
「ぐがー!」
ソノラはにっと笑うと、
「いいの!? じゃ、他の護人さんにもそう言って来るねー!」
走り出そうとしたソノラの頭に、木の上から小さな粒が跳ぶ。
「あいた!!」
果物の種の直撃を受けてソノラは頭を抱え込んだ。
〜ラトリクス・スクラップ置き場〜
「ふっふっふ。ここなら、銃が落ちてるかもしれないよね」
瓦礫を掻き分けながら、ソノラは銃を捜し求める。
「壊れてたって直せばいいし・・・え?」
ふわりと体が宙に浮き、ソノラは目をしばたいた。
精一杯首を捻って後ろを見ると、ロボットがソノラを持ち上げていた。
キュルキュルとキャタピラの音を響かせながら、ロボットはソノラを運んでいく。
「へ? ちょっと、どこ行くの!? 待って、誰か、たーすーけーてー!!!」
真っ赤な太陽が、海に沈もうとしていた。
打ち寄せる波の前に立ちはだかる少女。
「早く、あたしに、銃を、撃たせろーーーーー!!!」
海鳥が驚いて飛び去った。
ネコを肩に乗せた少年は覚めた瞳でその光景を眺めている。
「そんなこと言ってるから、警戒されるんじゃないかな」
「ミャー」
テコが同意の声を上げた。
「はあー。どうしたら、認めてもらえるのかなあ」
夕食をかき込みながら、ソノラは大きく溜息を付いた。
「別に焦らなくてもいいんじゃないかな? 今のままでも十分戦力にはなってるし」
「そう言って、先生あたしをレギュラーから外したじゃないの!」
ビシッとフォークを突きつけられて、レックスは冷や汗をかきつつ目をそらした。
「そ、そうだったかなー」
ヤードが口を開く。
「時間さえかければいずれ信頼関係も築けるでしょうが、今すぐというのなら、考える必要がありますね」
「戦力が上がるに越したことはねぇな」
「アタシたちも一肌脱ぎましょうか」
「向こうは俺達が信じられる奴がどうか見てんだ。なら、こっちも誠意を見せないとな。とにかく、積極的に好意を示せ!」
バサッと入り口の布が勢い良く跳ね上がる。
「ヤッファさーん! 今日は新鮮なお魚いっぱい持ってきたよー!」
「・・・またか」
ヤッファは部屋の中に寝転がったままだるそうに呟く。
ソノラは満面の笑みを浮かべながら、魚の使った籠を家の中に運び込んだ。
「今日も先生がたくさん釣ったからねー。ほら、これなんてこのまま焼いて食べても美味しいよー!」
「あっ、このお魚はシマシマさんの大好物なのですー!」
「本当? よし、じゃああたしが特別にカイル一家秘伝の魚料理を作ってあげるよ!」
「楽しみですー!」
うんざりした顔のヤッファを置き去りにして、盛り上がるマルルゥとソノラ。
「おいおい・・・」
「毎日お魚もってきてくれるから助かるですよー。良かったですね、シマシマさん。今日も晩ご飯作らなくてすみますよー!」
「それじゃあ、明日も期待しててね!」
(許可が出るまで続ける気か・・・)
ヤッファはごろりと床の上に転がって、昼寝の続きを始めるのだった。
「警戒するのは、俺達のことを良く知らないからだと思うんだ。だから、色々話してみるといいんじゃないかな」
「兄ノ・・・役ニ立チタイノカ?」
「うん! 銃を使うようになってから、やっと一人前の働きができたような気がして、嬉しかったんだ」
「・・・・・・」
「銃を失くしちゃった時は、目の前が真っ暗になっちゃったよ。情けないなあ、もっと頑張るつもりだったのに」
「・・・・・・」
パタパタ。
「すみません、今日はこれまでにしてもらえませんか?」
「あっ、じゃあ、あたしはもう帰るね。ファルゼン、またお話しようねー!」
ばたばたと慌しく掛け去っていくソノラを鎧の騎士はじっと見送っていた。
置いて行かれそうな不安。
必要とされる喜び。
遠い記憶が蘇る。
(兄さん・・・)
「ファリエル様が気にかけることではありません。別にたいした差があるわけではないでしょう」
鎧が消え、青白い少女が姿を現す。
「そうかもしれない。でも、あんな気持ち、私も知ってるもの」
ファリエルは強い決意を瞳に宿して呟いた。
「やっぱり銃が必要なことを認めてもらわないとね。アタシの見たところ、あの人達の弱点は・・・」
「だから、帝国軍は銃を使ってくるじゃない。ナイフじゃ射程が違うから、どうしたってこっちが不利でしょ?」
「それは、そうですが・・・」
キュウマは困惑の表情を見せた。ここぞとばかりにソノラがまくしたてる。
「あっちもどんどん本気になってくるし、このままじゃ危ないよ。最近、戦ってばかりでみんなの疲れも心配だし、使えるものは使わなきゃ!」
「ですが、帝国軍も現状では戦力の増強は不可能ですし、我々の力がそれに劣るとは思えません」
「でも、護人さんは誰も『見切り』使えないじゃない」
痛いところを突かれてキュウマの表情が凍りついた。
「召還術だって、銃の射程距離には適わないしさ。銃撃戦になったらヤバイんじゃない?」
「・・・考えてみましょう」
重い足取りで去って行くキュウマの背後でソノラは密かにガッツポーズを取った。
「連日押しかけてばかりでは、かえって心象を悪くするかもしれません。時には、考える時間を与える必要があるでしょう」
〜集いの泉〜
「それじゃ、あなたたちは認めるというのね?」
「まあ、お前が言い出したことだしな」
「護人全員の同意がなければ、許可は出せません」
「・・・・・・」
アルディラは硬い表情のまま、沈黙している
。
ヤッファがアルディラに向かって、
「悪い連中じゃないのは、わかってるだろう?」そう取り成すと、キュウマも続けて。
「正直、我々だけで島を守ってゆくのは、そろそろ限界ではないかと思うのです」
「駄目よ、銃だけは!」
アルディラは鋭い口調で遮った。
「ロレイラルの二の舞はごめんだわ。銃を扱う機械兵士さえいなければ、あそこまで酷くならなかったのよ!」
「彼ラハ・・・違ウ・・・」
「・・・・・・」
ファルゼンが静かに言うと、アルディラは口をつぐんだ。
ヤッファがなだめる様に語りかける。
「まあ、じっくり考えろや。お前が納得できるまでな」
「えっ!? いいの!?」
散歩に連れ出された犬のように素直に喜びを表すソノラに、アルディラは厳しい表情で、
「訓練場を使っていいと言っただけよ。外には持ち出さないでね」
「やったあ! 撃てるだけでも嬉しいよ! ありがとう、アルディラ!」
アルディラは小さく息をつくと、少し口調を和らげた。
「銃をきちんと扱えるだけの腕を持っているかどうか、見せてもらうわよ。味方に被害が出るようじゃ話にならないから」
「大丈夫! ・・・って言いたいけど、しばらく使ってないからなあ。 だけど、頑張って練習するよ! 頼りにしてもらえるようにね!」
アルディラは答えず、扉の横の小さな溝にカードを差し込んだ。機械的な声が響く。
「暗証番号を入力してください」
アルディラが素早くいくつかのボタンを押すと、再び、機械の声が答える。
「暗証番号を確認しました。ロックを解除します」
「うわあ・・・」
長い間閉ざされていたと思えないほど、中の空気はすんで、清潔に保たれていた。使う者がいなくても、機械達が定期的に掃除を行っているのだろう。
棚の中からアルディラが銃を取り出すのを、ソノラはきらきらと輝く目で見詰めていた。
(そんなにいいのかしら・・・こんなものが)
テーブルの上に数丁の銃が並べられると、ソノラは飛びつくような勢いで、一つ一つ調べていく。
「訓練用だし、威力はないけど、取り扱いには十分気をつけてね」
「OK!じゃ、まずこれから」
ダーン!
的の下に穴が開く。
「あー、外したっ! 今度はやるからねー!」
ソノラは再び銃を持ち上げると、的を睨み付ける。さっきまでのはしゃいだ様子とは別人のような真剣な表情。
ダーン!
的の中央近くに着弾。煙がゆらめく。
「よし、調子上がってきた! まだまだこんなもんじゃないからね!」
「そうね。あれが本調子じゃ困るわね」
「さあ、もういっちょ!」
長い間使わなかったらしく、銃を扱う手つきは少々ぎこちないが、良い素質を持っているように思われた。
たゆまず訓練に励めば、一流の銃使いになるだろう。
「・・・・・・」
信じるべきかどうか。
ヤッファに言われるまでもなく、悪い人間ではないことは、アルディラにもわかっている。
だが、ロレイラルの惨状は、未だにアルディラの脳裏に焼きついていた。
重く響く音と硝煙の臭いが否応なしに古い記憶を引きずり出す。
頭を押さえ、アルディラはそっと射撃場を後にした。
しばらくして、アルディラが再び射撃場に戻ってくると、ソノラがせっせと銃を磨いていた。
「今日はここまでにしとくね。本当にありがとう!」
「私は・・・別に・・・」
アルディラは並べられた銃を見てはっと目を見開いた。
どの銃もピカピカに磨き上げられて、人工の光の下で輝いている。
(使わなかった銃まで磨いてある・・・どうして?)
問われて、ソノラは少し気恥ずかしそうに答えた。
「そっか、アルディラには不思議に思えるんだね。これは、あたしの感謝の気持ち」
「感謝・・・?」
「今日も守ってくれてありがとうって。意味のないことかもしれないけど、何かしてあげたいの」
陰りのない笑顔を見ながら、アルディラは遠い過去の光景を思い出していた。
これとは全く異なるもの。
廃棄されたたくさんの銃。
あるいは壊れ、あるいは弾切れのために放り出され、省みられることなく、風雨にさらされている――――。
(そうね・・・確かに違うわね・・・)
〜集いの泉・ジルコーダ戦前〜
3人の護人達が待つ場所へ、アルディラが金属製のケース提げて現れた。
「珍しいな、お前が遅れるなんて」
「ごめんなさい、なかなか見つからなかったものだから」
アルディラがケースを開けると、黒光りする鉄製の武器が中から現れた。
「お前、それは・・・」
「非常事態だものね。できる限りのことをしなくては・・・。 何? 何が言いたいの?」
軽く睨まれて、ヤッファは慌てて微笑を引っ込めた。
「いやあ、別に。何でもねえよ」とぼけた口調で答える。
「彼女モ、喜ブダロウ・・・」
重々しくファルゼンが告げた。
「では、早く彼らを呼びましょう。事態は一刻を争います」
キュウマの言葉で、護人たちの顔に緊張が走る。
島の運命を掛けた戦いが始まろうとしていた。
コンコン。
「・・・はい〜?」
少々間をおいて、レックスのノックにしゃがれた声が応じた。
「ソノラ、もう朝食の時間だよ」
「・・・いらない〜・・・」
生気の抜けた声。
「ちょっと入るよ」
不安気な顔で、レックスはドアを開けた。
ベッドの上に、金色の髪をくしゃくしゃにして、ソノラが横たわっている。
顔色も悪く、だるそうな様子。
レックスは静かにベッドに歩み寄った。
「ソノラ、大丈夫?」
「・・・うー。最悪・・・」
レックスは苦笑した。
「あれだけ飲んで騒げはなあ」
「限度をわきまえないからですよ」
レックスの背後からウィルが同情のこもらない口調で言った。
ソノラはそれを無視してうめいている。
「頭痛いー。気持ち悪いー」
スカーレルが音も立てずに入ってきた。黄色い飲み物の入ったグラスを持っている。
「水分だけはちゃんと取りなさいよ。ほら、ナウバの実をジュースにしてみたの。二日酔いにも効くわよ」
ソノラの手の中のグラスをレックスが羨ましそうに見ている。
「それ、俺にもくれないかなあ」
「うふふ、そう言うと思って、ちゃんとみんなの分も作ってあるわよ」
「さすが、スカーレスは気が利くなあ。実は俺もちょっと気分が悪いんだよね」
「では、レックスさんの分も持ってきましょうか」
手に青黒い液体の入ったカップを持って、ヤードが言った。
レックスは慌てて首を振る。
「い、いいよ! 薬飲むほど悪くないし!」
「先生、ずるい〜」
押し付けられたカップの中身を、鼻をつまんで一気飲みしたソノラが抗議する。
「おーい、誰もメジいらねえのかー?」
カイルがドアの影から顔を出した。
「うう・・・。 アニキもスカーレルもあたしより飲んでたのに〜・・・。 何で平気なのお・・・」
「鍛え方の違いよね。 アタシは普段から飲んでるし」
「わははは! まさか、俺より飲める奴がいるとは思わなかったなー!」
「メイメイさんと飲み比べなんて無謀だよ」
「そういう先生は早々にリタイアしてましたね」
「あはは・・・。ウィル、こういう大人になっちゃ駄目だぞ」
「心配は無用です」
「ミャ!」
「みんな、朝ご飯が冷めるわよ」
「そうですね。ソノラさんを静かに寝かせてあげましょう」
部屋を出ようとして、レックスはふいに足を止めた。
「ああ、そうだ。これを預かってたんだ」
小さなカードと紙片。
不思議そうに見詰めるソノラに、レックスは、
「覚えてない? 昨日、アルディラがくれたじゃないか」
「んん〜・・・? あっ!?」
ガバッと勢い良く飛び起きるソノラ。さっきまでのぐったりした様子が嘘のように輝く目でカードを見詰める。
「射撃場のカードキー! もー、何でもっと早く渡してくれないのー?」
「昨日の様子じゃ失くしそうだったからね・・・。本当に・・・」
疲れた顔で、レックスは昨夜の記憶を思い出していた。
『それじゃ、暗証番号を教えるから、しっかり覚えてね。×××××・・・』
『ん〜? ○△◎☆・・・』
『違うでしょ!やる気あるの、あなたは!』
『アルディラさま、ソノラさまの体内のアルコール濃度が急激に上昇しています。記憶能力の低下により、複数桁の数字を覚えるのは極めて困難です』
『アルディラ、俺が書いとくから・・・』
ソノラはすっくとベッドの上に立つと、ポーズを決める。
「任せて先生! 何が来たって、あたしがこの銃で撃ち落してあげるからね! ガンスターソノラ、伝説の始まり!」
「・・・は、明日からにした方がよさそうね」
スカーレルの言葉の後、ソノラの体がぐにゃりと崩れ、ベッドの上に倒れこんだ。
「あーあ、急に動くから・・・」
布団を掛け直すレックス。
ひょいとその寝顔を覗き込んだカイルが言う。
「おーおー、幸せそうな顔しやがって。いい夢でも見てんのか?」