お迎え 〜本紀編〜



「伽藍様、手紙は確かに届けましたよ……あれ」
「まだ、ここにいたんですか?」
「む……ご苦労であった」

 伽藍は天上と天下が出かけた時の姿勢のまま、座布団の上に座っていた。
 どことなく、困惑した表情である。
 その白い毛の背後から鮮やかな色彩が除いていた。

 見ると、妖ノ宮と翠が伽藍の背にもたれて眠っている。

「森長…………」
「まだ仕事が残ってるんじゃないですか?」

 二人の部下が呆れたような視線を向けると、伽藍は困ったように答える。

「うむ……だが、動いては姫たちが起きてしまう」
「しょうがないですねえ」
「仕事はこっちに持ってきますよ」
「頼んだぞ」




 妖ノ宮が目を覚ました頃には、西の空は赤く染まっていた。

「いつまで寝ておるのか。儂も暇ではないのだぞ」
「ごめんなさい、大叔父上」

 大叔父の存在に驚きを感じながら、妖ノ宮は飛び起きた。
 本紀はすっかり冷めてしまった茶を置くと、立ち上がって妖ノ宮をじろりと睨み付けた。

「無駄にする時間など無いことは、お前もわかっておろう。帰ったらしっかり政治について学んでもらうぞ」

 返事も待たずにすたすたと歩み去る後ろ盾の後を、妖ノ宮は微笑を浮かべつつ追うのであった。