佐和人と姫様



 僕は姫様が大好きだ。
 姫様と過ごした幼い頃のことは、片時も忘れたことがない。

「御月佐和人を覚えているか?」
「覚えていません」

 姫様ほど美しい方は見たことがない。
 お会いする度にますます美しくなられてゆく。

「ヒイッ!?妖ノ宮!」
「見るたびに不気味になっていくわね……」
「変な光が出てないか?」

 姫様は美しいだけでく、心のお優しい方だ。

「恩次郎、お主も悪よのう!」
「いえいえ、姫様ほどではございません」

 姫様が怪しげな術を使うという噂があるが、僕は信じない。

「皆わかっていませんよね。姫様は普通の女性だというのに。僕のことだって、喰らったりはしないでしょう?」
「もちろんよ(佐和人はあんまり美味しくなさそうだし)」
「姫様のために、僕は出世いたします!待っていて下さいね(僕と姫様と結婚する、その日のために!)」
「頑張ってね、佐和人(この私が八蔓を支配する、その日のために!)」
「はい!」


 ああ、姫様。
 今日も佐和人は幸せです。