一通り儀式を済ませると、既に昼である。
昼食の膳を囲んで、鳩羽と妖ノ宮はようやく落ち着いたように一息つくのであった。
「じゃ、改めておめでとうございます」
「うむ、明けましておめでとう」
妖ノ宮が真面目くさって頭を下げると、鳩羽もそれに習った。
とちらからともなく、笑いが浮かぶ。
期待に満ちた顔で椀の蓋を開けた妖ノ宮は、思わず感嘆の声を上げる。
椀の中には、柔らかそうな餅が野菜と一緒に湯気を立てていた。
「まあ、美味しそうね!」
「ああ、まだついたばかりだからな。冷めないうちに頂こう」
年末に兵士達で餅をついたのだ。
妖ノ宮もその様子を楽しそうに見物していた。
厳しい戦いの最中とはいえ、心の休まる一時であった。
「餅はまだ沢山あるから、あなたも好きなだけ食べるといい」
「そうね!明日は黄粉で頂こうかしら。ぜんざいにするのもいいわね」
「・・・・・・」
妖ノ宮は楽しげに語りつつ、椀に口をつける。
夢中で雑煮を食べている最中、妖ノ宮は鳩羽がじっと自分の顔を見詰めていることに気づいた。
微かに頬を染めて、椀を置く。
「どうしましたか、鳩羽?私の顔に何かついていたかしら」
「いや、あなたがあまり旨そうに食べるので・・・。気を悪くしたら、済まない」
「いえ、構わないけど・・・。だって、本当に美味しいんだもの」
「そうだな」
鳩羽は思った。
去年はこれほど旨く感じただろうか。
目の前にいる嬉しそうな少女の存在が、この喜びの元になっていることを実感した。
鳩羽にとって今や、妖ノ宮は単に奉戴する姫というだけの存在ではなくなっているのだ。
その感情が何であるかはまだ、はっきりとわかっていなかったが。
二つの椀を手にとって、妖ノ宮が尋ねる。
「鳩羽もお代わりがいるのね?」
「ああ、頼む」
鳩羽は彼女に微笑んだ。
梢を吹く風は冷たいが、部屋の中は明るく、暖かな空気に満ちている。
この心地良い世界を守るため、彼らは死力を尽して戦うことだろう。